受験生の皆さんは社会で起こった出来事にも関心を持ちましょう。これから社会へ飛び立つ若者として知っておいてほしい時事問題や時事ニュースを,入試問題や面接などで問われることがあります。面接で「最近気になったニュースは?」と聞かれて何も答えられないのでは困ります。
この1年間の時事ニュースや重要ワードをまとめましたので,参考にしてください。
◆2014年春入試 おさえておきたい5つの時事ニュース◆
■富士山が世界文化遺産に
■2020年夏季五輪開催都市が東京に決定
■日本のTPP交渉参加
■出雲大社と伊勢神宮で「遷宮」
■異常気象と自然災害 猛暑・集中豪雨・台風・竜巻
◆2013年重要ワード◆
◆2014年春入試 おさえておきたい5つの時事ニュース◆
■富士山が世界文化遺産に
2013年6月,国内最高峰の「富士山」が世界文化遺産に登録されました。正式名称は「富士山━信仰の対象と芸術の源泉」です。登録の対象となったのは,山頂の信仰遺跡群や富士五湖など25の構成資産です。富士山から離れた「三保の松原(みほのまつばら)」も,富士山の価値を構成する資産として世界遺産に含まれました。
これで,日本の世界遺産登録は17件(文化遺産が13件,自然遺産が4件)になりました。富士山の文化的意義は,山体だけではなく,周囲の神社や登山道,洞穴,湖沼などが一体となって評価され,今回の登録となりました。
富士山は古来より日本人の山岳信仰の対象として親しまれ,平安時代初期には山ろくに「浅間神社」が建てられ,江戸時代には富士詣をする「富士講」がさかんに行われました。葛飾北斎や歌川(安藤)広重の浮世絵の題材となるなど,芸術作品でもその美しさが表現されています。
今後の課題として,環境保全に向けた様々な問題が残っています。世界遺産に登録されることで国内外から観光客が増え,地元の経済発展につながりますが,世界遺産は地球の宝としてきちんと環境の保全と管理を行う責務が生じます。
富士山の場合,登山客の安全と自然環境を守らなければなりません。そこで,入山客の規制も検討されています。世界遺産登録直後の2013年夏に入山料の徴収を試験的に行い,2014年夏から本格的に導入する予定です。
■2020年夏季五輪開催都市が東京に決定
2020年の夏季オリンピックが東京で開催されることが決まりました。最終候補地に日本の東京のほか,スペインのマドリード,トルコのイスタンブールの3都市が残り,2013年9月7日,国際オリンピック委員会(IOC)の総会がアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれました。3都市の最終プレゼンテーションが行われたのち,開催地を決める投票が行われ,東京が選ばれました。2020年夏季オリンピックは7月24日から8月9日まで,28競技が実施される予定です。
東京は「安心・安全・確実な五輪」をアピール。最終プレゼンでは「おもてなし」の心,東日本大震災からの「復興五輪」を掲げ,「スポーツには笑顔や希望,人々を結びつける力がある」と呼び掛けました。豊富な財源や治安の良さ,充実した交通網などを理由に票を集め,結果は圧勝。東京開催が決まった瞬間,日本でも大きな喜びに包まれました。
参加選手の移動や生活の負担を考え,ほとんどの競技施設を選手村から半径8km以内に配置する計画を立てています。選手や関係者が会場周辺を快適に過ごせる,これまでのオリンピックで最もコンパクトな大会を目指します。
同年8月25日から9月6日まで,パラリンピックも行われます。パラリンピックは障がいをもつ人たちを対象とした国際的なスポーツ大会で,オリンピックと同じ年に同じ場所で開催されます。
オリンピックが開催されると,世界中から多くの人が日本を訪れ,また,オリンピック関連施設の建設など,大きな経済効果をもたらすと思われます。また,次代を担う子供たちにとっても,オリンピックを自国で見られる経験は貴重なものとなることでしょう。
■日本のTPP交渉参加
TPPとは,正式には「環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)」といいます。2013年4月に承認を受け,12か国目の参加国として日本の参加が正式決定しました。それぞれの国で設定している関税をなくしたり,モノやサービスの行き来を自由にするための共通のルールをつくったりして,自由に貿易を行い,経済の発展を目指すことが目的です。
日本の参加の理由は,世界の自由貿易の波に乗り遅れずに,国際競争で有利に立つことです。近年の日本の経済は混迷しています。安倍首相は「アジアの新興国が次々に開放経済へと転換しているなか,日本だけが内向きになってしまっては成長の可能性はない」と述べ,TPPへの参加を決断しました。人口の減少によって国内の市場は縮小しており,経済を回復させるためにはアジアやアメリカへの輸出を増やすことが必要です。
メリットだけを見ると,もし関税が撤廃されれば,日本の主要な輸出品である自動車や電化製品をTPP参加国に輸出しやすくなり,他国との競争において有利になります。また,小売店を参加国に出店することも容易になるなど,ビジネスチャンスが豊富になります。
国内の経済界は,貿易の環境を改善するためにもTPPへ参加することを求めてきました。海外では経済の面でもグローバル化が進み,日本と競合する韓国は,アメリカやヨーロッパと自由貿易協定(FTA)を結んで市場の拡大を図っています。
一方デメリットも多くあります。TPPへの参加には,農林水産業への影響などを心配する声も根強くあります。日本の場合,農産物にかけられている関税が一気に廃止されれば,外国から安い農産物が多く輸入されます。国内の農家は価格競争に巻き込まれ,売り上げや利益という面で大きな打撃を受ける心配があります。その結果,日本の農業が衰退し,食料自給率が低下してしまう恐れがあります。外国産農産物の安全性にも不安が残ります。また,他国では工業製品の関税が撤廃されると先進国の製品が大量に入ってきて,自国の産業が打撃を受けるというケースもあります。
日本は農産物5品目(米・麦・牛肉・豚肉・乳製品・さとうの原料)を関税撤廃の例外にするよう主張しています。しかし,アメリカやオーストラリアなどは農産物の輸出を拡大したいことから反対意見が出ています。このように各国の利害が対立し,話し合いはまとまっていません。今後も引き続きTPPの会合が開かれ,合意に向けて話し合いが行われていきます。
■出雲大社と伊勢神宮で「遷宮」
2013年,出雲大社と伊勢神宮がそろって「遷宮(せんぐう)」を迎えました。
島根県出雲市にある出雲大社は,720年に成立した日本書紀にも記述がある歴史の古い神社で,「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)」をまつります。本殿の修造中には祭神である大国主大神を仮の住まいである仮殿に遷(うつ)し,5年をかけて本殿を造営します。2013年に行われたのが,修造のととのった本殿に祭神を遷す儀式で,神様を新たな住まいに遷すことを「遷宮」といいます。出雲大社では60年ぶりの遷宮を祝い,神楽,能,狂言,流鏑馬(やぶさめ)などの伝統行事やコンサート,祭りなどの祝賀行事が行われました。
三重県伊勢市にある伊勢神宮でも2013年10月,「式年遷宮」が行われました。伊勢神宮は,正式には地名の付かない「神宮」といいます。式年遷宮とは,式年として定められた20年に一度,内宮(ないくう)・外宮(げくう)の建物を造り替え,神様に遷ってもらう神事です。いわば神様のお引越しなのです。内宮には太陽を神格化した女神「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」が,外宮には衣食住のめぐみをあたえてくれる産業の守護神「豊受大御神(とようけのおおみかみ)」がまつられています。
式年遷宮では,建物だけでなく,神様の着物や宝物,宇治橋なども新しくします。そのために,日本全国から宮大工や刀,織物,漆細工などの最も優れた技術を持つ職人が集められ,昔からのやり方でつくられます。式年遷宮は,そうした伝統技術を次世代に伝承する意味でもたいへん意義のあることなのです。
■異常気象と自然災害 猛暑・集中豪雨・台風・竜巻
2013年の夏は太平洋高気圧に加えチベット高気圧が張り出した影響で,日本では猛暑が続きました。
高知県四万十市では,最高気温が40℃をこえる日が8月10日から4日続くという,かつてない暑さが続きました。8月12日には41.0℃まで気温が上がり,日本の最高気温の記録を6年ぶりに更新しました。
東京都では8月11日,気象観測開始から138年で初めて,都心部で最低気温が30℃を上回るという現象も起こりました。この猛暑のため熱中症になる人も続出し,熱中症患者への対応や予防の対策に追われました。
また,猛暑の影響による海や川の水温の上昇でサンゴが死滅したり,アユなど川魚の漁獲量が減ったりした地域がありました。農作物でも品質や収穫量が低下した地域がありました。
記録的な暑さになった地域がある一方で,豪雨による被害も相次ぎました。7月~8月にかけて,東北地方や山陰地方などで,1時間に100ミリ近い猛烈な雨が断続的に降り,大きな被害が発生しました。
2013年9月16日,大型の台風18号が愛知県豊橋市付近に上陸,日本列島各地に大きな被害をもたらしました。特に近畿地方では大雨が続き,京都府の桂川や由良川が氾濫,京都府だけでも2,800戸以上が浸水し,停電被害は14,320世帯に上りました。京都府,福井県,滋賀県には気象庁から「大雨特別警報」が発令されました。「ただちに命を守る行動を」と最大級の警戒が呼びかけられ,避難対象者は40万人近くに上りました。
こうした数十年に一度の被害が予想されるときに発令されるのが「特別警報」です。「警報」の発表基準をはるかに超える豪雨や大津波等が予想され,重大な災害の危険性が著しく高まっている場合に発令されます。東日本大震災を教訓として2013年8月30日からこの制度の運用が始まりました。
台風18号は,竜巻も発生させました。竜巻は,発達した積乱雲や積雲の下で起こる細長くのびた渦巻き状の上昇気流です。強いものになると車や家屋を吹き飛ばし,巻き上げたがれきで被害を広げてしまいます。巨大な積乱雲(スーパーセル)の内部の気流が激しくなり,渦の一部が地上にまで達して竜巻となります。
台風18号が日本列島に近づいた9月15日の夕方,和歌山県で3つの竜巻が連続して発生,夜には三重県,栃木県,埼玉県,群馬県でも竜巻が猛威をふるいました。台風18号のもたらした竜巻は過去最多の10個に上りました。
台風とは関係ない竜巻も発生しました。竜巻の強さを測る藤田スケールで「F2」の,非常に強い竜巻が9月2日,埼玉県で発生しました。さいたま市から茨城県坂東市まで約19kmにわたって移動。60人以上の負傷者を出し,1,400棟近くの家屋に被害をもたらしました。
10月16日,大型で強い台風26号は,,暴風域を伴って関東や東北沖を北上。東京・伊豆大島(大島町)では記録的大雨となり,土砂崩れなどで多数の家屋が倒壊しました。大島町を中心に死者が出るなど,関東各地で被害が広がりました。
気象庁によると,東京・伊豆大島では16日午前3時50分すぎまでの1時間雨量が122.5ミリと観測史上最多となる記録的な雨が降りました。
◆2013年重要ワード◆
アベノミクス
安倍首相の苗字とエコノミクスをかけあわせた言葉で,日本の経済成長を目的とした安倍内閣の経済政策。財政政策,金融政策,成長戦略の3つを「三本の矢」をして,デフレからの脱却と景気回復を目指す。
出雲大社
島根県出雲市にある神社。縁結びの神様として知られる大国主大神をまつる。2013年5月に「本殿遷座祭(ほんでんせんざさい)」,いわゆる「平成の大遷宮(せんぐう)」が行われ,ご神体が修造した本殿に鎮座した。出雲大社の遷宮は60~70年ごとに行われている。
伊勢神宮
三重県伊勢市にある神社。正式名称は地名の付かない「神宮」。内宮には太陽を神格化した「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」を,外宮には衣食住の守り神である「豊受大御神(とようけのおおみかみ)」をまつる。庶民には親しみを込めて「お伊勢さん」と呼ばれ,江戸時代は伊勢参りが盛んだった。2013年は社殿を造り替える20年に一度の大祭,式年遷宮の年で,ご神体を新宮へ遷(うつ)すさまざまな儀式が行われた。
1票の格差
国政選挙などにおいて,議員1人あたりの有権者数が選挙区によって異なるために,有権者が投じる1票の重みが異なること。日本国憲法が定める法の下の平等に反するとして訴訟となる場合もある。最近では,最高裁が2009年の選挙の区割り,2010年の定数配分について「違憲状態」とした。2013年には3月,広島高裁は広島1区・2区の選挙を「違憲」「無効」とする完結を言い渡した。2012年の衆議院議員総選挙に対しても1票の格差から選挙無効を求めた訴訟が起こり,2013年11月,最高裁は「違憲状態」の判決を下し,選挙無効には至らなかった。
憲法第96条
憲法改正の手続きについて定めた条項。現在,憲法改正には衆議員・参議院で,それぞれの総議員の3分の2以上の賛成を得たうえで国会が改正を発議し,国民投票によって過半数の賛成を持って承認を経なければならない。安倍首相は,この条文が憲法改正の大きな障壁になっているとし,まずは第96条を改正すべきとの見解を示した。
国際宇宙ステーション(ISS)
地球から約400kmの宇宙空間にある,地球や宇宙の観測,宇宙での実験や研究を行うための有人の宇宙施設。日本,アメリカ,ロシア,カナダ,ヨーロッパなど世界15か国が協力して建設を進めている。2013年11月には,日本人宇宙飛行士の若田光一氏がロシアの宇宙船ソユーズでISSに向かった。4度目の宇宙飛行で,長期滞在は2度目。滞在の後半では日本人初のISSコマンダー(船長)を務める。
参議院議員通常選挙
参議院議員を選ぶための選挙。参議院議員の任期は6年。任期満了にともなって,定員の半数を改選するために3年ごとに行われる選挙。2013年7月21日に第23回参議院議員通常選挙の投開票が行われ,自民党が圧勝。この選挙から初めてインターネットを使った選挙運動が解禁された。
三陸復興国立公園
青森県から宮城県に至る三陸海岸一帯の国立公園。東日本大震災により被災した三陸地域の自然公園を再編成して,2013年5月に創設された国立公園。岩手県と宮城県にまたがる陸中海岸国立公園に,青森県八戸市,階上町の種差海岸階上岳県立自然公園を編入して誕生した。今後,東北の太平洋沿岸にある国定公園や県立公園も順次編入していく予定。三陸の豊かな自然や文化に触れるための遊歩道を整備し,観光地として三陸の魅力を高める。震災被害の爪痕を保存し,津波の脅威を後世に残して学べる国立公園を目指す。
世界遺産
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」にもとづき,世界的に重要な遺産として「世界遺産リスト」に登録された自然や遺跡,景観などを指す。自然遺産・文化遺産・複合遺産に大別される。2013年には「富士山━信仰の対象と芸術の源泉」が世界遺産に登録された。
0増5減
1票の格差を是正するための調整案のひとつで,小選挙区の定数を削減する案。議席数を5つ減らし,それに対する定数の増加は行わない。2013年6月の衆議院本会議で「0増5減」を実現する区割り法が成立した。これにより,次回の衆議院議員総選挙から山梨,福井,高知,徳島,佐賀の5県の小選挙区の定数が3から2に減り,衆議院の総定数は475(小選挙区295,比例代表180)となる。
TPP(環太平洋経済連携協定,Trans-Pacific Partnership)
環太平洋地域の国どうしの取引の自由化を目的とした経済連携協定。各国間で輸入品にかかる関税をゼロにして,貿易を自由に行えるようにしようというもの。物資だけでなく,人やサービスも自由化するため,外国人労働者の受け入れにも規制がなくなる。2006年,シンガポール,ニュージーランド,ブルネイ,チリが締結。その後アメリカ,オーストラリア,ペルー,ベトナム,マレーシア,カナダ,メキシコが加わり,2013年に日本も12か国目の参加国として交渉に参加した。自動車や電化製品などの輸出の拡大が見込める反面,外国から価格の安い農産物が輸入され,日本の農業が危うくなる心配もある。
富士山
静岡県と山梨県にまたがる日本の最高峰の山。標高3776mの活火山である。古来より霊峰とされ信仰の対象であり,その優美な円錐型の山並みは日本の象徴として親しまれ,古くから芸術作品の題材にもされてきた。周辺には観光名所が多く,夏季は富士登山が盛んである。山頂の信仰遺跡群や富士五湖,三保松原など25の構成資産が2013年6月,「富士山━信仰の対象と芸術の源泉」の名で「世界文化遺産」に登録された。日本の世界遺産は,富士山が加わったことで合計17件(文化遺産13件,自然遺産4件)となった。