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第49話「2013年大学入試で伸びた中高一貫校を考える(2)」
2013年10月25日

(1)男子校・・・2013年10月15日更新
(2)女子校・・・2013年10月18日更新
(3)共学校・・・ 2013年10月22日更新
(4)公立中高一貫校・・・ 2013年10月25日更新
今回は前回に続いて2013年大学入試で合格実績が伸びた中高一貫校について考えてみます。前回は大学合格実績の見方について、いわば総論にあたる話をしましたが、今回は各論にあたる話で、個別的に2013年入試で伸びた注目校を、男子校、女子校、共学校および公立中高一貫校について数校ずつ見ていきます。
2.2013年大学入試で伸びた中高一貫校
(1)男子校
世田谷学園(世田谷区)

世田谷学園 近年急速に大学合格実績が上がっている学校で、昨年は東大合格者を7→12名と初の二けたに乗せて話題になりました。今年の東大は12名で変わりませんが、東工大7→13名、北大3→6名など国公立大合計は58→74名、早慶上智大も247→288名と大きく伸びています。カトリックの上智大学は女子受験生に人気の高い大学ですが、今年全国で最多の合格者をだした高校は、禅宗(曹洞宗)系の仏教主義男子校の世田谷学園だったのもちょっとした話題です。また早慶上智の中では慶應大への志向が強く、浪人すれば確実に東大に合格すると思われる生徒(東大は不合格者に本人の得点が開示されるので、数点差で不合格であればリベンジして合格する可能性が高いことがかなり正確に予測できます)でも浪人せず慶応大への進学を選ぶことが多いそうです。中学受験時に慶応系と併願していた生徒が多いことも背景にあるようです。上位男子校としては非常に現役志向が強く今年の現役進学率は80%ですが、上位層の中には妥協することなく難関大を目指していく動きが出てきたのか、昨年の国公立大合格者58名中浪人は3名に対して、今年の74名中浪人は10名、早慶上智大では昨年の合格者247名中浪人が17名、今年は288名中32名でした。
東京都市大付(世田谷区)
東京都市大付(2009年に武蔵工大附より校名変更)はここ数年で付属校から進学校へ転換し、高校募集を停止して完全中高一貫校になり人気急上昇、4年連続の応募者増、また3年連続で都内最多の応募者と大変勢いのある学校です。大学合格実績(現浪計)では、国公立大が東大1名、京大2名、一橋大1名、東工大2名、東京医科歯科大1名、東北大3名など最難関レベルでも健闘、国公立大合計では35→48→66名、早慶上理大は69→86→125名、GMARCH大は140→150→201名と特にこの春大きく伸びています。しかも卒業生数は258→238→226名と減っているのですから相当な増加率と言えます。入学レベルも急速に上がっていますから、さらに大学合格実績が伸びて行くのは確実です。
芝(港区)
かつては自由でのんびりした校風から「芝温泉」などと言われたこともありましたが、ここ数年ですっかり面目を一新しています。特に前年は東大5→14名、京大3→6名、一橋大5→12名、東工大9→11名、早慶上智大も206→285名と難関大の実績を大きく伸ばし注目を集め、今年は東大が14→16名で、国公立大の合計は121→127名とわずかな伸びですが、現役合格者は85→95名と10名増、早慶上智大は285→273名と若干減っていますが、現役合格者は185→209名とむしろ増えています。卒業生数が285→273名と12名減にもかかわらず、難関大の現役合格者は増えていて、前年の躍進がフロックでなかったことを証しています。また医学部にも強く、国公立が12(8)名、私立が40(27)名で合計52(35)名です。(( )内は現役で内数、防衛医大を含む)
暁星(千代田区)
暁星は都心にある都内では数少ないカトリック・ミッションの男子校で、併設小から100名前後、中学からは75名前後が入学ですから、1学年175名前後の小規模な学校です。そのため1つの大学の合格者が多くないので目立ちませんが、安定した高いレベルの合格実績を出してきました。今年は特に国公立大や早慶上智大でよい結果を出しています。国公立大の合計はこの5年間40名台でしたが、今年は東大9→17名、京大1→3名など含めて合計で42→65名、早慶上智大は100~120名台でしたが、108→179名と大きく伸びています。
獨協(文京区)
獨協は創立130周年を迎えた都内有数の伝統校で、1学年が200名前後の小規模な学校です。埼玉にある姉妹校は共学校ですが、文京区の方は完全中高一貫の男子校です。併設の獨協大学へは7名、独協医大は2名が推薦されていますが、ほとんどは他大学受験です。2013年は国公立大計21名で東大2名、東工大1名、阪大1名、筑波大1名などほぼ例年並みの実績ですが、早慶上理大が45→39→59名、GMARCH大は122→79→119名と卒業生193名という学校規模を考えるとなかなかのものです。また系列校に医大があるため医学部希望者が多く、今年は独協医大6名、北里大3名など延べ26名(内現役11名)合格と相当な実績です。
京華(文京区)
創立116年目の伝統校で、近年では「面倒見が良い学校」「入学時の偏差値に比べ進学実績が高い」「入学後、生徒を伸ばしてくれる」と評判の学校です。年々合格実績は上昇していましたがメインは日東駒專でした。しかし今年はGMARCH大以上が大きく伸びています。早慶上理大は27→28名と前年並みですいが、国公立大が7→20名、GMARCH大は35→81名と激増しています。また日東駒專も76→117名、さらに男子校らしく芝浦工大・東京都市大・東京電機大という理工系3大学は37→106名と大幅増です。中学の特別選抜クラスや高校のS特進コースの新設などの新教育体制によって今後さらに実績の向上が期待されます。
逗子開成(逗子市)

逗子開成 男子校で今年の最大の話題校は神奈川の逗子開成です。この学校は1903年に東京開成中(現在の開成中高)の田邊校長によって第二開成学校として設立され、今年創立110年目を迎えた神奈川で最も古い私立男子校です(ちなみに鎌倉女学院は逗子開成の姉妹校です)。80年代初頭に6名の犠牲者を出した冬の北アルプス八方尾根での遭難事故で混乱した母校を立て直すべく就任した徳間理事長(徳間書店社長、のちに校長も兼務)のカリスマ的指導力と財力による大胆な学校改革により、中学募集の再開や大学合格実績の向上で人気が急上昇。
しかし2000年に徳間理事長が亡くなったあと、一時の勢いがなくなって伸び悩みの時期が続きました。これに危機感を持った理事会と管理職で学校がとるべき戦略について何度も議論を重ねたうえで、全教員の取り組みとして、地方の名門公立進学校、東京・神奈川の有名私立進学校の視察に行き、その結果は会議で報告されて情報が共有されさまざまな改革の参考にされました。また教員自身による授業の改善などの改革への努力は、生徒たちのやる気を大いに引き出したようです。その結果として、2013年春の大学合格実績が驚くほど大躍進しました。
特に世間の耳目を集めたのは難関国公立大の大きな伸びで、この3年間で東大が4→4→14名というのもさることながら、京大0→0→1名、一橋大2→4→10名、東工大7→5→10名、阪大0→0→2名、東北大5→3→6名など旧帝大クラスの6大学の合計で20→16→43名と大きく伸びています。なお東大は現役で22名が受験し11名合格です。2013年の東大前期日程の全科類の倍率は3.1倍ですからかなりの好成績です。また一橋大は現役で16名受験して7名が合格、東工大は現役で22名が受験し8名が合格しています。
難関私大では早慶上智大が139→205→236名とこの2年間で大きく増加。これだけ難関国公立大、上位私大が増えているのは一部の優秀な生徒が実績を稼いだというものではなく、間違いなく学年全体の成果です。またGMARCH大が286→334→299名と前年よりかなり減っていることも合わせて考えれば、受験のメインターゲットの大学がワンランク上に変わってきているのでしょう。
藤嶺学園藤沢(藤沢市)
鎌倉新仏教の一つで浄土教系の時宗の教えに基づく仏教主義教育の中堅男子校です。中学の募集再開から12年たち第7期の一貫生157名が卒業しました。この間大学合格実績が多少良かった年もありましたが、ここ数年は停滞気味でした。しかし今春は大きく躍進といって過言ではない伸びを示しています。東大こそ出ませんでしたが、一橋大2名、東北大2名、九大1名など国公立大合計が11(8)→27(21)名で27名全員が一貫生です。早慶上理大は27(22)→41(26)名、さらにGMARCH大は58(47)→101(73)名と2倍近く伸びています。(( )内は現役で内数)
(2)女子校
?友学園女子(世田谷区)

?友学園女子 今春最も大学合格実績の伸びが目立った女子校です。東大合格者が3→4→11名と初の二桁に乗ったのも注目されますが、それだけでなく国公立大合計が78→88→99名と着実に伸びており、さらに国公立大の中でも最難関の旧7帝大に一橋大、東工大を加えた9大学の合計が19→20→29名と増えていることから実績の人数だけではなく、内容が充実してきているのがわかります。なお東大の11名は全員現役、国公立大合格者99名中86名が現役です(卒業生264名)。早慶上智大は168→191→201名と昨年はかなり増えましたが、今年は国公立大の増加に比べてわずかな伸びにとどまっています。これは上位層の国公立大シフト、理系シフトが進んでいるために早慶上智大の受験者が減っているためと思われます。
頌栄女子学院(港区)
帰国生が多く英語教育に定評がある学校で、早慶上智大の実績は女子校の中でもトップレベルでしたが、2013年は東大1→3名、一橋大1→5名、東工大2→5名、東京医科歯科大0→2名、東北大0→1名、阪大0→2名など旧帝大クラスで大きく伸び、国公立大合計でも29→47名と大きく伸びました。そのためか早慶大の現役合格者の延べ人数は169→174名と増えていますが、実際に進学した人数は80→58名と大きく減っています。また以前は文系進学者が多い学校でしたが近年は医学部など理系進学者が増えています。今年の理経進学者は26%です。今後さらに国公立大志向や理系志向が高くなっていくものと予想されます。
山脇学園(港区)

山脇学園 「山脇ルネサンス」と称する学校改革により短大付属校から進学校へ転換し、前年はその成果が進路結果にも表れて人気急上昇、今春入試では都心の中堅女子校ではひとり勝ちに近く、応募者が37%増となりました。大学合格実績は今年も大きく伸びていて、この3年間で早慶上理大が35→53→70名、GMARCH大は90→155→211名と大変な勢いです。 ただ国公立大は昨年東工大に2名の合格者を出したものの、総計では11→13→14名とわずかな伸びです。しかしここ数年の入学者のレベルアップもあり、国公立大も含めてさらに実績向上が期待できる学校です。閉学した短大校舎も全面リニューアルを終え新4号館となって、講習やクラブ活動の専用棟として使用が開始されています。他の新校舎も2014年度中にすべて完成予定で港区赤坂という都心とは思えない広大で緑豊かな新キャンパスの誕生でますます人気が上がりそうです。
神奈川学園(横浜市神奈川区)
横浜駅から徒歩圏の立地ながら地味な校風で市内の私立女子校では数少ない非宗教系の学校です。「21世紀教育プラン」に基づく学校改革の成果がようやく進路結果に出てきて、国公立大は計7名で前年同数ながら、内容的には一橋大1名、北大1名、東外大1名、福島医大1名などレベルアップ、さらに私大では早慶上智大が7→8→33名、GMARCH大は45→57→80名、また津田塾大、東京女子大、日本女子大のトップ3女子大計でも7→12→22名と大きく伸びています。この実績の躍進は着実に進めてきた改革によるものですから、決して1年で終わることなく今後もさらにのびていくものと思われます。
横浜富士見丘中等教育学校(横浜市旭区)
2007年新校地への移転と同時に、女子校としては全国唯一の中等教育学校が開校し、この春に1期生が卒業しました。前身の富士見丘中高は素直で性格が良い生徒が多い学校として評判がよく、大学進学率も上がっていましたが、難関大合格者はほんの数名でした。中等教育学校としてスタートするにあたり、MARCH大以上の難関大へも進学できるようにカリキュラムや学習内容の全面的な見直しが行われてその結果が注目されていましたが、1期生の実績は予想以上のもので、国公立大は1名だけですが、これがなんと最難関レベルの東工大、さらに上位私大では早慶上理大が2→9名、GMARCH大は1→21名と激増、有名女子大も津田塾大、学習院女子大、日本女子大、聖心女子大、大妻女子大、共立女子大、清泉女子大、実践女子大など延べ140名以上が合格と大躍進です。また全合格件数延べ401名中、理工系学部が70名、薬学・看護などの医療系大学が30名と理系が大きく伸びています。さらに注目されるのが受験にあたっての入試方法で、今までは推薦入試やAO入試の利用が主流でしたが、今年は推薦入試・AO入試の利用が半減し、一般入試が主流になっています。前身の富士見丘中高時代にはなかった、目標に向かってチャレンジしていく雰囲気が出てきているようです。これは必ず1期生に続く2期生以下の学年の生徒たちに大きな影響を与えるでしょう。今後も早慶上理大、MARCH大を中心にさらに伸びて行くものと期待されます。
浦和明の星女子(さいたま市緑区)
1967年に創立された県内唯一のカトリック・ミッションの女子校で、2003年に中学が開校し、2006年に高校募集を停止して県内唯一の完全中高一貫校になっています。国公立大は総計で30→55→51名とやや減ですが、東大は4→3→6名と増えています。難関私大では早慶上理大が113→178→187名、GMARCH大は62→162→158名とほぼ前年並みです。なお2012年に実績が大きく伸びているように見えますが、これはこの年卒業した4期生が定員を120→160名と増員した学年という事情があります。特筆されるのは海外の大学の合格者の急増で、昨年までは例年0~1名だったのが、今年はアメリカ東部の名門大学コーネル大1名を含めて延べ7名が合格しています。
(3)共学校
穎明館(八王子市)

穎明館 1学年が160~170名台の小規模校のため、通常のランキングで上位にくることはありませんが、実は非常に大学合格実績の良い学校です。特に2013年は東大こそ7→4名に減っていますが、よく見ると難関大の実績を伸ばしています。今春の卒業生は171名で、難関国立大を「旧7帝大」プラス「一橋大・東工大」の9大学合計で見ると、15→21→24名(全員現役)、国公立大の総計では44→63→67名(現役57名)、また難関私大は早慶上智大が116→129→165名(現役141名)、MARCH大は163→160→210名(現役170名)、国公立の医学部医学科は3→8→9名(現役4名)、私大医学部医学科は8→12→20名(現役8名)と大きく伸びているのがわかります。
駒込(文京区)
都内では唯一の天台宗系の仏教主義学校で、江戸時代の天和2年(1682年)に設立された勧学講院が母体という非常に古い歴史のある学校です。しかし教育内容に古めかしいところはまったくなく、リベラルな校風で国際理解教育や難関大進学を目指すカリキュラムやコースの設置、さらに中高一貫体制の充実を図って人気が上昇しています。大学合格実績も上がってきていますが、今春は特に難関大実績が好調です。国公立大は東大1名、東工大1名、また今や大人気の秋田の国際教養大を含めて合計で3→15名と大幅に増え、難関私大でも早慶上理大が24→31名、GMARCH大は49→61名と大きく伸びています。
青稜(品川区)
すでに共学の中堅進学校として評価の高い学校で、昨年は国公立大で京大1名、一橋大1名、東工大1名を含めて27→51名、難関私大でも早慶上智大が40→88名、MARCH大はなんと99→231名と大きく合格実績を伸ばして、今年の入試では応募総数が22%増の2,061名と人気が急上昇しました、ところが今春は国公立大計が3名減の48、早慶上智大は13名減の75名、MARCH大は7名減の224名といずれも少し減っています。しかしよく見ると国公立大の実績は質的に向上しているようで、東大2名、東工大2名、北大1名などの最難関レベルで健闘しているだけでなく、昨年多かった富山大などの地方の国立大がほとんどなくなり、難易度がより高い筑波大、東京農工大、横浜国大などの首都圏の国立大が増えています。また昨年は0名だった医学部合格者も私大医学部ですが3名出ています。つまり一見すると実績が低下したように見えますが、内容的にはむしろ充実してきていると言えそうです。
森村学園(横浜市緑区)
1学年が170~200名程度の小規模校で半数以上の約100名は併設小からの生徒です。以前は「お坊ちゃま・お嬢様学校」というイメージもありましたが、この20年ほどでアットホームな校風は変わっていませんが、学力の向上を教育目標の柱として難関大を目指す進学校への転換を図って大きくイメージが変わっています。カリキュラムの見直しから、中学と高校で分かれていた組織を一本化、高校募集の停止で完全中高一貫化、また2010年に完成した新校舎建設、近年ではグローバル化時代を生きていくのに必要なコミュニケーション能力育成のために、週1回の「言語技術」の時間の導入などの学校改革の努力の成果か、今春は大学合格実績が大きく伸びています。国公立大は東大こそ出ませんでしたが、東工大4名、一橋大1名、北大2名、東北大1名、阪大1名など最難関レベルの大学が2→9名(全員現役)と増え、国公立大合計でも15→26名(現役23名)で過去最高、早慶上理大は42→78名(現役67名)、GMARCH大は84→142名(現役128名)と大躍進しています。教員集団、生徒ともに活気がありまだまだ伸びていきそうな学校です。
渋谷教育学園幕張(千葉市美浜区)

渋谷教育学園幕張 首都圏の共学校で市進偏差値が65を超える最上位校はほとんどが国立大付属校か早慶大の系列校で、私立の共学進学校は渋谷教育学園幕張とその姉妹校の渋谷教育学園渋谷だけです。東大合格者ベスト10の首都圏の学校は国立大付属校と私立中高一貫校で占められていますが、昨年までは私立はすべて東京・神奈川の男子校と女子校でした。ところが今春の東大入試で渋谷教育学園幕張が34→49→61名と大躍進し初の東大合格者ベスト10入りです。これは単に昨年より12名増えたというだけでなく、つぎのような大きな意味があるでしょう。
①なかなか超えることのできなかった50の大台を一気に超えて60台に乗り、
前述のように初の全国ベスト10入りした(8位)。
②全国の私立共学校として初のベスト10入り。
③首都圏では東京・神奈川以外の私立校で初のベスト10入り。
特に②と③は大げさに言えば受験史上に残る歴史的快挙です。また東大は理Ⅲに3名合格しているのも注目され、さらに東大、京大、一橋大、東工大の最難関国立4大学の合計で見ても64→88→104名と増加していて、最上位層が厚くなっているのがうかがえます。なおこの3年間の卒業生数は355→375→336名と今年が最も少なく、今年の躍進がいかに大きかったかがわかります。また海外の大学進学への先進的な取り組みでも知られ、今年はハーバード大1名、プリンストン大1名、イェール大2名など延べ45名(うち帰国生24名)が合格しています。
市川(市川市)
低迷していた時期がありましたが、2003年に共学化して以来の学習や進路に対する積極的な取り組みによって大学合格実績も復調し、一時は差をつけられていた東邦大東邦を上回る勢いです。国公立大の合計では128→156名と28名増ですが、増加したのはほとんどが最難関レベルの大学で、東大6→13名、京大0→2名、一橋大3→6名、東工大10→15名など「旧7帝大」プラス「一橋大・東工大」という最難関国立大合計で30→56名と大きく伸びています。早慶上智大は354→329名と減っていて、全体として国公立大へ志向が変わってきていることを思わせます。
東邦大東邦(習志野市)
前述の2校とともに千葉御三家といわれる学校です。今年は前記2校の大学合格実績の伸びが大きかったので目立ちませんが、東邦大東邦の実績も決して悪いわけではありません。今春は全体的には昨年よりやや下がっていますが、東大は2→7→10名と伸びています。国公立大合格者は東大の他、京大2名、一橋大6名、東工大13名、東京医科歯科大3名、阪大2名、名大2名、北大2名、東北大6名、筑波大20名、などの難関大を含めて現浪計で170名(現役102名)、難関私大も早慶上理大413名(現役300名)、MARCH大291名(現役221名)というのはなかなかのものです(卒業生443名)。また併設大が医学部・薬学部・看護学部をもつ医療系大学のため、医療系学部の希望者が多く、医学部医学科は国公立が32名(現役14名)、私大は延べ39名(現役25名)で計71名(現役39名)と医学部合格者が非常に多い学校です。なお今年の東邦大医学部への内部推薦は12名でした。
栄東(さいたま市見沼区)
埼玉では開智とならぶ大人気校で、県内はもとより東京・神奈川・千葉からも多くの受験生が集まります。今春の入試の応募総数は前年の全国最多8,172名を19%も上回る9,703名という人気ぶりです。1978年に高校が設立され1992年に中学が開校したまだ新しい学校ですが、すでに進学校として確固とした定評があるようです。今春の卒業生は357名で、昨年の289名より68名多いこともありますが、最難関国公立大の実績をわずかですが伸ばしています。東大11→12名、京大0→1名、一橋大1→3名、東工大4→5名などで、国公立大の総数では196→202名で、現役合格は172名ですから、学年の48%が国公立大に現役合格です。難関私大は早慶上智大が202→228名、GMARCH大が204→259名と伸びています。また医学部医学科は国公立・私立の合計で28→49名と大きく伸びていて、現役合格者は15→35名と大幅増です。
(4)公立中高一貫校
東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城の公立中高一貫校は21校ありますが、すでに卒業生を出しているのは、首都圏で最も早い2003年開校の埼玉県立伊奈学園の他、都立白?高附・小石川・両国高附・桜修館、千代田区立九段、および今春1期生が卒業した千葉市立稲毛高附、さいたま市立浦和の8校です。特に2011年に都立白?の1期生が東大合格者5名を出して以来大きく注目されるようになったのはご存じのとおりです。 なお2014年3月には都立立川国際・武蔵高附、千葉県立千葉、茨城県立並木の4校の1期生がまた2015年3月には神奈川県立相模原・平塚の2校の1期生が卒業します。
都立桜修館(目黒区)

都立桜修館 昨年1期生(150名)が卒業し、東大4名が出て人気が急上昇、今春入試では応募者が1,072→1,501名と40%の大幅増となっています。さらにこの春卒業した2期生(154名)は1期生を上回る実績をあげています。国公立大は東大4→6名、京大0→2名、北大1→2名、東北大0→2名、東京医科歯科大0→2名など最難関大で増えていますが、合計でも33→58名と大きく伸びています。1期生はもちろん33名全員が現役で、2期生の現役は47名です。難関私大は早慶上智大で78→83名と増えていますが、現役では78→75名と微減です。MARCH大は83→155名と大幅増で、現役でも83→114名と相当な増加です。
都立小石川(文京区)
桜修館と同じく昨年1期生(159名)が卒業し、東大4名、京大1名、東北大2名、名大1名などの実績を出しました。ただし小石川は母体校の旧都立小石川高校が名門校として知られ、入学レベルも都立中高一貫校10校中で最も高い学校ですから、桜修館と大学合格実績が大差ないのは物足りないという声もあったようです。しかしこの春卒業した2期生(158名)は1期生を上回る実績を上げました。国公立大は東大4→5名、一橋大0→3名、東工大0→3名、北大0→4名、東北大2→3名、阪大0→1名、九大0→1名など含めて合計で38→76名と倍増で、現役合格は38→53名、また医学部医学科は0→4名(現役3名)です。早慶上智大も52→107名と倍増で、現役でも52→72名と相当に伸びています。
都立両国高附(墨田区)
やはり昨年一貫の1期生が卒業しました。この学校は併設型中高一貫校で、中学で120名、高校からは80名の募集です。大学合格実績は一貫生と高校からの入学生の内訳が公表されていませんが、東大など最難関レベルの合格者はほとんどが一貫生だとのことです。この春には2期生が卒業しさらに実績が上がっています。国公立大は東大3→5名、一橋大1→3名、東工大4→5名、北大0→3名、東北大2→3名、筑波大5→10名などで合計では61→84名、現役では44→69名、早慶上智大も63→76名、現役では50→64名と大きく実績を伸ばしています。
千代田区立九段(千代田区)

千代田区立九段 唯一の区立中高一貫校でそのため入試では区内枠の区分Aと区外枠の区分Bがあり、かなり入学レベルが異なります。また2006年の開校ですが、1期生と2期生は旧千代田区立九段中から無試験で3年生と2年生に編入された学年で、1期生は2010年、2期生は2011年に卒業しています。適性検査を受けて入学した最初の学年は3期生で昨年卒業しましたが、この学年はいろいろな事情により、高校進学時に他校へ進路変更した生徒が多かったので、入学時の160名が卒業時は121名に減って、実績も目立ったところはありませんでした。以上のことから大学合格実績について見るのはこの春卒業した4期生(139名)からが適切です。国公立大は東大0→2名、一橋大0→2名、東工大1→3名、東北大1→2名、東京医科歯科大0→1名、東京外語大1→2名、筑波大3→10名など合計33名で、早慶上智大は26→46名、GMARCH大は49→105名と大きく増えています。様々な状況も改善されてきていますから今後さらに実績向上が期待されます。
千葉市立稲毛高附(千葉市美浜区)
中学は2007年に開校した併設型中高一貫校で、この春に1期生が卒業しました。中学で80名、高校からは240名の募集です。大学合格実績は一貫生と高校からの入学生の内訳が公表されていませんが、いままでほとんど合格者のなかった旧7帝大などの難関大合格者が急に増えているのは間違いなく一貫生の実績でしょう。国公立大は京大2(2)名、東北大2(2)名、名大1(1)名、東京外語大3(3)名、国際教養大1(1)名、千葉大12(8)名などで総計では22(19)→38(32)名、難関私大では早慶上理大が24(15)→65(37)名、GMARCH大は139(108)→198(149)名と大幅に増加しています。(( )内は現役で内数)
さいたま市立浦和(さいたま市浦和区)
千葉市立稲毛高附と同じく2007年に開校した併設型中高一貫校で、この春に1期生が卒業しました。中学80名、高校240名の募集も同じです。大学合格実績は一貫生だけの分も公表されていて、国公立大は東大1名、一橋大1名、東北大1名、筑波大3名、自治医大1名、埼玉大6名など計28名、難関私大は、早慶上理大46名、GMARCH大72名と80人規模としては大健闘です。
2.2013年大学入試で伸びた中高一貫校
(1)男子校
世田谷学園(世田谷区)

世田谷学園 近年急速に大学合格実績が上がっている学校で、昨年は東大合格者を7→12名と初の二けたに乗せて話題になりました。今年の東大は12名で変わりませんが、東工大7→13名、北大3→6名など国公立大合計は58→74名、早慶上智大も247→288名と大きく伸びています。カトリックの上智大学は女子受験生に人気の高い大学ですが、今年全国で最多の合格者をだした高校は、禅宗(曹洞宗)系の仏教主義男子校の世田谷学園だったのもちょっとした話題です。また早慶上智の中では慶應大への志向が強く、浪人すれば確実に東大に合格すると思われる生徒(東大は不合格者に本人の得点が開示されるので、数点差で不合格であればリベンジして合格する可能性が高いことがかなり正確に予測できます)でも浪人せず慶応大への進学を選ぶことが多いそうです。中学受験時に慶応系と併願していた生徒が多いことも背景にあるようです。上位男子校としては非常に現役志向が強く今年の現役進学率は80%ですが、上位層の中には妥協することなく難関大を目指していく動きが出てきたのか、昨年の国公立大合格者58名中浪人は3名に対して、今年の74名中浪人は10名、早慶上智大では昨年の合格者247名中浪人が17名、今年は288名中32名でした。
東京都市大付(世田谷区)
東京都市大付(2009年に武蔵工大附より校名変更)はここ数年で付属校から進学校へ転換し、高校募集を停止して完全中高一貫校になり人気急上昇、4年連続の応募者増、また3年連続で都内最多の応募者と大変勢いのある学校です。大学合格実績(現浪計)では、国公立大が東大1名、京大2名、一橋大1名、東工大2名、東京医科歯科大1名、東北大3名など最難関レベルでも健闘、国公立大合計では35→48→66名、早慶上理大は69→86→125名、GMARCH大は140→150→201名と特にこの春大きく伸びています。しかも卒業生数は258→238→226名と減っているのですから相当な増加率と言えます。入学レベルも急速に上がっていますから、さらに大学合格実績が伸びて行くのは確実です。
芝(港区)
かつては自由でのんびりした校風から「芝温泉」などと言われたこともありましたが、ここ数年ですっかり面目を一新しています。特に前年は東大5→14名、京大3→6名、一橋大5→12名、東工大9→11名、早慶上智大も206→285名と難関大の実績を大きく伸ばし注目を集め、今年は東大が14→16名で、国公立大の合計は121→127名とわずかな伸びですが、現役合格者は85→95名と10名増、早慶上智大は285→273名と若干減っていますが、現役合格者は185→209名とむしろ増えています。卒業生数が285→273名と12名減にもかかわらず、難関大の現役合格者は増えていて、前年の躍進がフロックでなかったことを証しています。また医学部にも強く、国公立が12(8)名、私立が40(27)名で合計52(35)名です。(( )内は現役で内数、防衛医大を含む)
暁星(千代田区)
暁星は都心にある都内では数少ないカトリック・ミッションの男子校で、併設小から100名前後、中学からは75名前後が入学ですから、1学年175名前後の小規模な学校です。そのため1つの大学の合格者が多くないので目立ちませんが、安定した高いレベルの合格実績を出してきました。今年は特に国公立大や早慶上智大でよい結果を出しています。国公立大の合計はこの5年間40名台でしたが、今年は東大9→17名、京大1→3名など含めて合計で42→65名、早慶上智大は100~120名台でしたが、108→179名と大きく伸びています。
獨協(文京区)
獨協は創立130周年を迎えた都内有数の伝統校で、1学年が200名前後の小規模な学校です。埼玉にある姉妹校は共学校ですが、文京区の方は完全中高一貫の男子校です。併設の獨協大学へは7名、独協医大は2名が推薦されていますが、ほとんどは他大学受験です。2013年は国公立大計21名で東大2名、東工大1名、阪大1名、筑波大1名などほぼ例年並みの実績ですが、早慶上理大が45→39→59名、GMARCH大は122→79→119名と卒業生193名という学校規模を考えるとなかなかのものです。また系列校に医大があるため医学部希望者が多く、今年は独協医大6名、北里大3名など延べ26名(内現役11名)合格と相当な実績です。
京華(文京区)
創立116年目の伝統校で、近年では「面倒見が良い学校」「入学時の偏差値に比べ進学実績が高い」「入学後、生徒を伸ばしてくれる」と評判の学校です。年々合格実績は上昇していましたがメインは日東駒專でした。しかし今年はGMARCH大以上が大きく伸びています。早慶上理大は27→28名と前年並みですいが、国公立大が7→20名、GMARCH大は35→81名と激増しています。また日東駒專も76→117名、さらに男子校らしく芝浦工大・東京都市大・東京電機大という理工系3大学は37→106名と大幅増です。中学の特別選抜クラスや高校のS特進コースの新設などの新教育体制によって今後さらに実績の向上が期待されます。
逗子開成(逗子市)

逗子開成 男子校で今年の最大の話題校は神奈川の逗子開成です。この学校は1903年に東京開成中(現在の開成中高)の田邊校長によって第二開成学校として設立され、今年創立110年目を迎えた神奈川で最も古い私立男子校です(ちなみに鎌倉女学院は逗子開成の姉妹校です)。80年代初頭に6名の犠牲者を出した冬の北アルプス八方尾根での遭難事故で混乱した母校を立て直すべく就任した徳間理事長(徳間書店社長、のちに校長も兼務)のカリスマ的指導力と財力による大胆な学校改革により、中学募集の再開や大学合格実績の向上で人気が急上昇。
しかし2000年に徳間理事長が亡くなったあと、一時の勢いがなくなって伸び悩みの時期が続きました。これに危機感を持った理事会と管理職で学校がとるべき戦略について何度も議論を重ねたうえで、全教員の取り組みとして、地方の名門公立進学校、東京・神奈川の有名私立進学校の視察に行き、その結果は会議で報告されて情報が共有されさまざまな改革の参考にされました。また教員自身による授業の改善などの改革への努力は、生徒たちのやる気を大いに引き出したようです。その結果として、2013年春の大学合格実績が驚くほど大躍進しました。
特に世間の耳目を集めたのは難関国公立大の大きな伸びで、この3年間で東大が4→4→14名というのもさることながら、京大0→0→1名、一橋大2→4→10名、東工大7→5→10名、阪大0→0→2名、東北大5→3→6名など旧帝大クラスの6大学の合計で20→16→43名と大きく伸びています。なお東大は現役で22名が受験し11名合格です。2013年の東大前期日程の全科類の倍率は3.1倍ですからかなりの好成績です。また一橋大は現役で16名受験して7名が合格、東工大は現役で22名が受験し8名が合格しています。
難関私大では早慶上智大が139→205→236名とこの2年間で大きく増加。これだけ難関国公立大、上位私大が増えているのは一部の優秀な生徒が実績を稼いだというものではなく、間違いなく学年全体の成果です。またGMARCH大が286→334→299名と前年よりかなり減っていることも合わせて考えれば、受験のメインターゲットの大学がワンランク上に変わってきているのでしょう。
藤嶺学園藤沢(藤沢市)
鎌倉新仏教の一つで浄土教系の時宗の教えに基づく仏教主義教育の中堅男子校です。中学の募集再開から12年たち第7期の一貫生157名が卒業しました。この間大学合格実績が多少良かった年もありましたが、ここ数年は停滞気味でした。しかし今春は大きく躍進といって過言ではない伸びを示しています。東大こそ出ませんでしたが、一橋大2名、東北大2名、九大1名など国公立大合計が11(8)→27(21)名で27名全員が一貫生です。早慶上理大は27(22)→41(26)名、さらにGMARCH大は58(47)→101(73)名と2倍近く伸びています。(( )内は現役で内数)
(2)女子校
?友学園女子(世田谷区)

?友学園女子 今春最も大学合格実績の伸びが目立った女子校です。東大合格者が3→4→11名と初の二桁に乗ったのも注目されますが、それだけでなく国公立大合計が78→88→99名と着実に伸びており、さらに国公立大の中でも最難関の旧7帝大に一橋大、東工大を加えた9大学の合計が19→20→29名と増えていることから実績の人数だけではなく、内容が充実してきているのがわかります。なお東大の11名は全員現役、国公立大合格者99名中86名が現役です(卒業生264名)。早慶上智大は168→191→201名と昨年はかなり増えましたが、今年は国公立大の増加に比べてわずかな伸びにとどまっています。これは上位層の国公立大シフト、理系シフトが進んでいるために早慶上智大の受験者が減っているためと思われます。
頌栄女子学院(港区)
帰国生が多く英語教育に定評がある学校で、早慶上智大の実績は女子校の中でもトップレベルでしたが、2013年は東大1→3名、一橋大1→5名、東工大2→5名、東京医科歯科大0→2名、東北大0→1名、阪大0→2名など旧帝大クラスで大きく伸び、国公立大合計でも29→47名と大きく伸びました。そのためか早慶大の現役合格者の延べ人数は169→174名と増えていますが、実際に進学した人数は80→58名と大きく減っています。また以前は文系進学者が多い学校でしたが近年は医学部など理系進学者が増えています。今年の理経進学者は26%です。今後さらに国公立大志向や理系志向が高くなっていくものと予想されます。
山脇学園(港区)

山脇学園 「山脇ルネサンス」と称する学校改革により短大付属校から進学校へ転換し、前年はその成果が進路結果にも表れて人気急上昇、今春入試では都心の中堅女子校ではひとり勝ちに近く、応募者が37%増となりました。大学合格実績は今年も大きく伸びていて、この3年間で早慶上理大が35→53→70名、GMARCH大は90→155→211名と大変な勢いです。 ただ国公立大は昨年東工大に2名の合格者を出したものの、総計では11→13→14名とわずかな伸びです。しかしここ数年の入学者のレベルアップもあり、国公立大も含めてさらに実績向上が期待できる学校です。閉学した短大校舎も全面リニューアルを終え新4号館となって、講習やクラブ活動の専用棟として使用が開始されています。他の新校舎も2014年度中にすべて完成予定で港区赤坂という都心とは思えない広大で緑豊かな新キャンパスの誕生でますます人気が上がりそうです。
神奈川学園(横浜市神奈川区)
横浜駅から徒歩圏の立地ながら地味な校風で市内の私立女子校では数少ない非宗教系の学校です。「21世紀教育プラン」に基づく学校改革の成果がようやく進路結果に出てきて、国公立大は計7名で前年同数ながら、内容的には一橋大1名、北大1名、東外大1名、福島医大1名などレベルアップ、さらに私大では早慶上智大が7→8→33名、GMARCH大は45→57→80名、また津田塾大、東京女子大、日本女子大のトップ3女子大計でも7→12→22名と大きく伸びています。この実績の躍進は着実に進めてきた改革によるものですから、決して1年で終わることなく今後もさらにのびていくものと思われます。
横浜富士見丘中等教育学校(横浜市旭区)
2007年新校地への移転と同時に、女子校としては全国唯一の中等教育学校が開校し、この春に1期生が卒業しました。前身の富士見丘中高は素直で性格が良い生徒が多い学校として評判がよく、大学進学率も上がっていましたが、難関大合格者はほんの数名でした。中等教育学校としてスタートするにあたり、MARCH大以上の難関大へも進学できるようにカリキュラムや学習内容の全面的な見直しが行われてその結果が注目されていましたが、1期生の実績は予想以上のもので、国公立大は1名だけですが、これがなんと最難関レベルの東工大、さらに上位私大では早慶上理大が2→9名、GMARCH大は1→21名と激増、有名女子大も津田塾大、学習院女子大、日本女子大、聖心女子大、大妻女子大、共立女子大、清泉女子大、実践女子大など延べ140名以上が合格と大躍進です。また全合格件数延べ401名中、理工系学部が70名、薬学・看護などの医療系大学が30名と理系が大きく伸びています。さらに注目されるのが受験にあたっての入試方法で、今までは推薦入試やAO入試の利用が主流でしたが、今年は推薦入試・AO入試の利用が半減し、一般入試が主流になっています。前身の富士見丘中高時代にはなかった、目標に向かってチャレンジしていく雰囲気が出てきているようです。これは必ず1期生に続く2期生以下の学年の生徒たちに大きな影響を与えるでしょう。今後も早慶上理大、MARCH大を中心にさらに伸びて行くものと期待されます。
浦和明の星女子(さいたま市緑区)
1967年に創立された県内唯一のカトリック・ミッションの女子校で、2003年に中学が開校し、2006年に高校募集を停止して県内唯一の完全中高一貫校になっています。国公立大は総計で30→55→51名とやや減ですが、東大は4→3→6名と増えています。難関私大では早慶上理大が113→178→187名、GMARCH大は62→162→158名とほぼ前年並みです。なお2012年に実績が大きく伸びているように見えますが、これはこの年卒業した4期生が定員を120→160名と増員した学年という事情があります。特筆されるのは海外の大学の合格者の急増で、昨年までは例年0~1名だったのが、今年はアメリカ東部の名門大学コーネル大1名を含めて延べ7名が合格しています。
(3)共学校
穎明館(八王子市)

穎明館 1学年が160~170名台の小規模校のため、通常のランキングで上位にくることはありませんが、実は非常に大学合格実績の良い学校です。特に2013年は東大こそ7→4名に減っていますが、よく見ると難関大の実績を伸ばしています。今春の卒業生は171名で、難関国立大を「旧7帝大」プラス「一橋大・東工大」の9大学合計で見ると、15→21→24名(全員現役)、国公立大の総計では44→63→67名(現役57名)、また難関私大は早慶上智大が116→129→165名(現役141名)、MARCH大は163→160→210名(現役170名)、国公立の医学部医学科は3→8→9名(現役4名)、私大医学部医学科は8→12→20名(現役8名)と大きく伸びているのがわかります。
駒込(文京区)
都内では唯一の天台宗系の仏教主義学校で、江戸時代の天和2年(1682年)に設立された勧学講院が母体という非常に古い歴史のある学校です。しかし教育内容に古めかしいところはまったくなく、リベラルな校風で国際理解教育や難関大進学を目指すカリキュラムやコースの設置、さらに中高一貫体制の充実を図って人気が上昇しています。大学合格実績も上がってきていますが、今春は特に難関大実績が好調です。国公立大は東大1名、東工大1名、また今や大人気の秋田の国際教養大を含めて合計で3→15名と大幅に増え、難関私大でも早慶上理大が24→31名、GMARCH大は49→61名と大きく伸びています。
青稜(品川区)
すでに共学の中堅進学校として評価の高い学校で、昨年は国公立大で京大1名、一橋大1名、東工大1名を含めて27→51名、難関私大でも早慶上智大が40→88名、MARCH大はなんと99→231名と大きく合格実績を伸ばして、今年の入試では応募総数が22%増の2,061名と人気が急上昇しました、ところが今春は国公立大計が3名減の48、早慶上智大は13名減の75名、MARCH大は7名減の224名といずれも少し減っています。しかしよく見ると国公立大の実績は質的に向上しているようで、東大2名、東工大2名、北大1名などの最難関レベルで健闘しているだけでなく、昨年多かった富山大などの地方の国立大がほとんどなくなり、難易度がより高い筑波大、東京農工大、横浜国大などの首都圏の国立大が増えています。また昨年は0名だった医学部合格者も私大医学部ですが3名出ています。つまり一見すると実績が低下したように見えますが、内容的にはむしろ充実してきていると言えそうです。
森村学園(横浜市緑区)
1学年が170~200名程度の小規模校で半数以上の約100名は併設小からの生徒です。以前は「お坊ちゃま・お嬢様学校」というイメージもありましたが、この20年ほどでアットホームな校風は変わっていませんが、学力の向上を教育目標の柱として難関大を目指す進学校への転換を図って大きくイメージが変わっています。カリキュラムの見直しから、中学と高校で分かれていた組織を一本化、高校募集の停止で完全中高一貫化、また2010年に完成した新校舎建設、近年ではグローバル化時代を生きていくのに必要なコミュニケーション能力育成のために、週1回の「言語技術」の時間の導入などの学校改革の努力の成果か、今春は大学合格実績が大きく伸びています。国公立大は東大こそ出ませんでしたが、東工大4名、一橋大1名、北大2名、東北大1名、阪大1名など最難関レベルの大学が2→9名(全員現役)と増え、国公立大合計でも15→26名(現役23名)で過去最高、早慶上理大は42→78名(現役67名)、GMARCH大は84→142名(現役128名)と大躍進しています。教員集団、生徒ともに活気がありまだまだ伸びていきそうな学校です。
渋谷教育学園幕張(千葉市美浜区)

渋谷教育学園幕張 首都圏の共学校で市進偏差値が65を超える最上位校はほとんどが国立大付属校か早慶大の系列校で、私立の共学進学校は渋谷教育学園幕張とその姉妹校の渋谷教育学園渋谷だけです。東大合格者ベスト10の首都圏の学校は国立大付属校と私立中高一貫校で占められていますが、昨年までは私立はすべて東京・神奈川の男子校と女子校でした。ところが今春の東大入試で渋谷教育学園幕張が34→49→61名と大躍進し初の東大合格者ベスト10入りです。これは単に昨年より12名増えたというだけでなく、つぎのような大きな意味があるでしょう。
①なかなか超えることのできなかった50の大台を一気に超えて60台に乗り、
前述のように初の全国ベスト10入りした(8位)。
②全国の私立共学校として初のベスト10入り。
③首都圏では東京・神奈川以外の私立校で初のベスト10入り。
特に②と③は大げさに言えば受験史上に残る歴史的快挙です。また東大は理Ⅲに3名合格しているのも注目され、さらに東大、京大、一橋大、東工大の最難関国立4大学の合計で見ても64→88→104名と増加していて、最上位層が厚くなっているのがうかがえます。なおこの3年間の卒業生数は355→375→336名と今年が最も少なく、今年の躍進がいかに大きかったかがわかります。また海外の大学進学への先進的な取り組みでも知られ、今年はハーバード大1名、プリンストン大1名、イェール大2名など延べ45名(うち帰国生24名)が合格しています。
市川(市川市)
低迷していた時期がありましたが、2003年に共学化して以来の学習や進路に対する積極的な取り組みによって大学合格実績も復調し、一時は差をつけられていた東邦大東邦を上回る勢いです。国公立大の合計では128→156名と28名増ですが、増加したのはほとんどが最難関レベルの大学で、東大6→13名、京大0→2名、一橋大3→6名、東工大10→15名など「旧7帝大」プラス「一橋大・東工大」という最難関国立大合計で30→56名と大きく伸びています。早慶上智大は354→329名と減っていて、全体として国公立大へ志向が変わってきていることを思わせます。
東邦大東邦(習志野市)
前述の2校とともに千葉御三家といわれる学校です。今年は前記2校の大学合格実績の伸びが大きかったので目立ちませんが、東邦大東邦の実績も決して悪いわけではありません。今春は全体的には昨年よりやや下がっていますが、東大は2→7→10名と伸びています。国公立大合格者は東大の他、京大2名、一橋大6名、東工大13名、東京医科歯科大3名、阪大2名、名大2名、北大2名、東北大6名、筑波大20名、などの難関大を含めて現浪計で170名(現役102名)、難関私大も早慶上理大413名(現役300名)、MARCH大291名(現役221名)というのはなかなかのものです(卒業生443名)。また併設大が医学部・薬学部・看護学部をもつ医療系大学のため、医療系学部の希望者が多く、医学部医学科は国公立が32名(現役14名)、私大は延べ39名(現役25名)で計71名(現役39名)と医学部合格者が非常に多い学校です。なお今年の東邦大医学部への内部推薦は12名でした。
栄東(さいたま市見沼区)
埼玉では開智とならぶ大人気校で、県内はもとより東京・神奈川・千葉からも多くの受験生が集まります。今春の入試の応募総数は前年の全国最多8,172名を19%も上回る9,703名という人気ぶりです。1978年に高校が設立され1992年に中学が開校したまだ新しい学校ですが、すでに進学校として確固とした定評があるようです。今春の卒業生は357名で、昨年の289名より68名多いこともありますが、最難関国公立大の実績をわずかですが伸ばしています。東大11→12名、京大0→1名、一橋大1→3名、東工大4→5名などで、国公立大の総数では196→202名で、現役合格は172名ですから、学年の48%が国公立大に現役合格です。難関私大は早慶上智大が202→228名、GMARCH大が204→259名と伸びています。また医学部医学科は国公立・私立の合計で28→49名と大きく伸びていて、現役合格者は15→35名と大幅増です。
(4)公立中高一貫校
東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城の公立中高一貫校は21校ありますが、すでに卒業生を出しているのは、首都圏で最も早い2003年開校の埼玉県立伊奈学園の他、都立白?高附・小石川・両国高附・桜修館、千代田区立九段、および今春1期生が卒業した千葉市立稲毛高附、さいたま市立浦和の8校です。特に2011年に都立白?の1期生が東大合格者5名を出して以来大きく注目されるようになったのはご存じのとおりです。 なお2014年3月には都立立川国際・武蔵高附、千葉県立千葉、茨城県立並木の4校の1期生がまた2015年3月には神奈川県立相模原・平塚の2校の1期生が卒業します。
都立桜修館(目黒区)

都立桜修館 昨年1期生(150名)が卒業し、東大4名が出て人気が急上昇、今春入試では応募者が1,072→1,501名と40%の大幅増となっています。さらにこの春卒業した2期生(154名)は1期生を上回る実績をあげています。国公立大は東大4→6名、京大0→2名、北大1→2名、東北大0→2名、東京医科歯科大0→2名など最難関大で増えていますが、合計でも33→58名と大きく伸びています。1期生はもちろん33名全員が現役で、2期生の現役は47名です。難関私大は早慶上智大で78→83名と増えていますが、現役では78→75名と微減です。MARCH大は83→155名と大幅増で、現役でも83→114名と相当な増加です。
都立小石川(文京区)
桜修館と同じく昨年1期生(159名)が卒業し、東大4名、京大1名、東北大2名、名大1名などの実績を出しました。ただし小石川は母体校の旧都立小石川高校が名門校として知られ、入学レベルも都立中高一貫校10校中で最も高い学校ですから、桜修館と大学合格実績が大差ないのは物足りないという声もあったようです。しかしこの春卒業した2期生(158名)は1期生を上回る実績を上げました。国公立大は東大4→5名、一橋大0→3名、東工大0→3名、北大0→4名、東北大2→3名、阪大0→1名、九大0→1名など含めて合計で38→76名と倍増で、現役合格は38→53名、また医学部医学科は0→4名(現役3名)です。早慶上智大も52→107名と倍増で、現役でも52→72名と相当に伸びています。
都立両国高附(墨田区)
やはり昨年一貫の1期生が卒業しました。この学校は併設型中高一貫校で、中学で120名、高校からは80名の募集です。大学合格実績は一貫生と高校からの入学生の内訳が公表されていませんが、東大など最難関レベルの合格者はほとんどが一貫生だとのことです。この春には2期生が卒業しさらに実績が上がっています。国公立大は東大3→5名、一橋大1→3名、東工大4→5名、北大0→3名、東北大2→3名、筑波大5→10名などで合計では61→84名、現役では44→69名、早慶上智大も63→76名、現役では50→64名と大きく実績を伸ばしています。
千代田区立九段(千代田区)

千代田区立九段 唯一の区立中高一貫校でそのため入試では区内枠の区分Aと区外枠の区分Bがあり、かなり入学レベルが異なります。また2006年の開校ですが、1期生と2期生は旧千代田区立九段中から無試験で3年生と2年生に編入された学年で、1期生は2010年、2期生は2011年に卒業しています。適性検査を受けて入学した最初の学年は3期生で昨年卒業しましたが、この学年はいろいろな事情により、高校進学時に他校へ進路変更した生徒が多かったので、入学時の160名が卒業時は121名に減って、実績も目立ったところはありませんでした。以上のことから大学合格実績について見るのはこの春卒業した4期生(139名)からが適切です。国公立大は東大0→2名、一橋大0→2名、東工大1→3名、東北大1→2名、東京医科歯科大0→1名、東京外語大1→2名、筑波大3→10名など合計33名で、早慶上智大は26→46名、GMARCH大は49→105名と大きく増えています。様々な状況も改善されてきていますから今後さらに実績向上が期待されます。
千葉市立稲毛高附(千葉市美浜区)
中学は2007年に開校した併設型中高一貫校で、この春に1期生が卒業しました。中学で80名、高校からは240名の募集です。大学合格実績は一貫生と高校からの入学生の内訳が公表されていませんが、いままでほとんど合格者のなかった旧7帝大などの難関大合格者が急に増えているのは間違いなく一貫生の実績でしょう。国公立大は京大2(2)名、東北大2(2)名、名大1(1)名、東京外語大3(3)名、国際教養大1(1)名、千葉大12(8)名などで総計では22(19)→38(32)名、難関私大では早慶上理大が24(15)→65(37)名、GMARCH大は139(108)→198(149)名と大幅に増加しています。(( )内は現役で内数)
さいたま市立浦和(さいたま市浦和区)
千葉市立稲毛高附と同じく2007年に開校した併設型中高一貫校で、この春に1期生が卒業しました。中学80名、高校240名の募集も同じです。大学合格実績は一貫生だけの分も公表されていて、国公立大は東大1名、一橋大1名、東北大1名、筑波大3名、自治医大1名、埼玉大6名など計28名、難関私大は、早慶上理大46名、GMARCH大72名と80人規模としては大健闘です。
[次回予告] 第50話 「2014年中学入試予想 第1弾―-―9月公開模試から入試動向を読む――」
いよいよ中学入試も秋の陣。入試にむけて勉強はもとより志望校の選択も正念場を迎える時期に入ってきているものと思います。多くの受験生が参加する公開模試も9月から本格的になってきました。次回は9月中に実施された大手公開模試によって2014年の入試動向を予想します。もちろんまだ志望校確定の最終的な段階ではありませんので、志望動向に流動的な要素もあることに留意しながら見ていきます。