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第55話 「2014年中学入試速報!埼玉・千葉の1月入試スタート(2)」
2014年2月17日
今回は前回の埼玉の私立中入試の速報に続き、1月20日からスタートした千葉の私立中一般入試についての速報です。いくつかの茨城の私立中についても最後に触れる予定です。本稿執筆時点でまだ入試が行われており最終回の入試がこれからという学校もかなりあり、さらに入試の基本データを未公表の学校もまだかなりあるため中間報告として読んでいただければ幸いです。
なお前回の繰り返しになりますが埼玉や千葉の中学入試状況を見ていく際に以下に述べる事情に注意する必要があります。首都圏の中学入試は実施時期から、埼玉・千葉の1月入試と東京・神奈川の2月入試に大きく分かれ、埼玉・千葉の1月入試には東京・神奈川の受験生が大量に「試し受験」しています。そのために「試し受験」が集中する東京寄りのいくつかの学校は同規模・同レベルの東京・神奈川の学校に比べて応募者、受験者が非常に多くなる場合があります。しかし東京・神奈川の受験生の多くは合格しても入学しないためそれを見越して合格者も大量に出します。したがって見かけの応募倍率が実態と大きく乖離していることが多いので注意が必要です。
また応募者の増減が東京・神奈川の受験生の「試し受験者」の増減によるのか、県内を中心とした「本気受験者」の増減によるのかによっても入試の内容が大きく変わってきますから、その見極めも重要なポイントになります。
1.千葉の私立中入試
千葉の私立中は24校あり、女子校が3校、共学校が21校です(男子校はありません)。2012年入試では前年の東日本大震災の影響で県内の多くの学校が応募者数を減らしましたが、2013年入試では主要校の多くが応募者数を回復しました。2014年入試はまだデータがそろっていないため統計数字で示すことはできませんが、個々の学校での増減はもちろんあるものの、千葉全体としては微増もしくは前年並みを維持しているようです。東京・神奈川・埼玉では全体として応募者減は間違いないところですから1都3県では最も堅調な入試だったといえましょう。なお12月に行われた推薦入試(専願入試、第一志望入試)については第53話を見てください。
(1)女子校
国府台女子(市川市)は仏教主義(浄土真宗)教育の女子校です。ここ数年好調な大学実績や新校舎完成で人気が上がり、第一志望の推薦の応募が増えてきたため推薦の定員を40→50名に増員したところ、応募者が240→222名と減ってしまいました。推薦とはいえ4倍近い倍率のため敬遠されたのでしょうか。
一般入試の1回も応募者が924→806名と118名の減ですが、減った118名のうち90名は居住地からみて明らかに「試し受験者」なので、「本気受験者」の減は28名ということになります。受験者は860→740名で、合格者が450→435名ですが、「本気受験者」の割合が高くなったため手続き率が上がり公募定員160名に対し推薦合格の68名を含め210名以上が手続きしていて、このままいけば教室が足りなくなりそうな状況です。 そのため2回は合格者を絞り込んで定員の10名を下回る8名とし倍率が9.5倍という厳しい入試になっています。

聖徳大附女子 聖徳大附女子 (松戸市)は昨年からS選抜クラス・選抜クラス・進学クラスの3クラス制になり、今年は入試の各回の定員と選考方法を大きく変えています。前年は1回午前・午後と特待生選考入試のみでS選抜の合格を出していましたが、今年は特待生選考入試を除くすべての入試回で成績によってS選抜クラス・選抜クラス・進学クラスの合格を出すように変わりました(したがってスライド合格はなくなりました)。12月の第一志望入試は45→30名と定員減ですが応募者は前年と同数の65名でした。1回午前は定員を15→80名と増員とスライド合格なしでS選抜のみの判定からS選抜、選抜、進学の3クラスの判定を行うようになり、応募者が65→199名と3倍増。定員を45→10名と減員の1回午後は141→92名と減っていますが、2回と特待入試も好調で、応募総数では678→764名と13%増、受験総数では468→511名と9%増です。この応募者・受験者の増加は入試選考方法の変更で受験しやすくなったのにくわえ、前年度に新設されたS選抜クラスが定着してきたこともあるでしょう。入試状況は上位層が増えたものの、合格者総数を300→433名と44%も増やしているのでやや緩和しているようです。合格者の3クラスの内訳はS選抜83→99名、選抜143→206名、進学74→128名です。
和洋国府台女子(市川市)はここ数年応募者・入学者の減少が続いているため、昨年は定員を280→210名と減員しました。今年は一般入試を2回から3回に増設しています。しかし応募者総数は1,044→1,156名と増えたものの、欠席者が増えたため受験者総数は744→612名と132名減です。合格者総数を668→549名と減らしたため、3回平均の倍率は昨年の2回の平均倍率と1.1倍で変わっていません。
(2)共学校
まず千葉御三家といわれるトップ3校から見ていきましょう。
渋谷教育学園幕張(千葉市美浜区)は東大合格者を34→49→61名と大きく伸ばして注目を集めましたが、難化が予想されて敬遠されたのか、応募者は1次が1,850→1,822名、2次は546→557で総数では2,416→2,379名と微減です。しかし学校の評価が高まり手続き率の上昇を予想してか合格者を絞っていて、倍率は1次が2.3→2.5倍、2次は10.2→11.4倍と上がっています。
またハーバード大学など北米を中心とした海外の大学への指導でも実績を上げているためか、帰国入試の応募者は73→110名と大幅に増加し、倍率も1.9→3.2倍に大きく上昇しています。

市川 市川(市川市)は東大・京大・一橋大・東工大の最難関国立4大学の合格実績を14→19→36名と伸ばし勢いがあります。
1回の応募者は帰国生を除いて2,495→2,697名と8%増、受験者も2,427→2,615名で8%増、合格者を前年同数の1,225名にとどめたため倍率は2.0→2.1倍とわずかに上昇しています。受験生が増えているのは主に県内の市川市や千葉市を中心とした地元エリアと都内東部です。大学合格実績の向上によって県内生が東京の学校ではなく本校を選ぶようになってきているようで手続き状況も良くなっています。2回の応募者は前年の応募者増で敬遠されたのか県内生が減って(都内生は変わらず)478→422名と12%減、受験者は443→392名と12%減ですが、1回の手続き状況がよいため合格者を77→65名に絞り込んで倍率は5.8→6.0倍に上昇しています。
応募者は2回合計で2,973→3,114名と5%増、受験者も2,870→3,007で5%増でした。なお1回と同日に行われた帰国生入試の応募者は渋谷教育学園幕張や海城などに上位層が回ったのかⅠ型・Ⅱ型の合計で80→61名と減っています。
東邦大付東邦(習志野市)もこのところ大学合格実績が好調で、東大、京大、一橋大、東工大の最難関国立大4大学の合格者が20→26→31名と伸びています。またよく知られているように併設の東邦大医学部も含めた医歯薬系進学にも強い学校です。
このところ応募者数は安定していますが、女子にやや増加傾向が見られます。今年の前期の応募者は2,477→2,475名と前年とほとんど同数ですが、内訳では男子が26名減、女子は24名増でした。男子は県外の受験生が減り、女子は県内の受験生が増えているとのことです。合格者を1,149→1,101名と絞って倍率は2.1→2.2倍とわずかに上がっています。
後期の応募者は466→497名と31名増で、前期とは逆に男子が36名増、女子が5名減です。合格者が34→26名と絞られて倍率は12.8→17.4倍と急上昇し厳しい入試となっています。
上記の3校に続くのが昭和学院秀英(千葉市美浜区)です。1回は12月1日の第一志望入試で応募者は微減ですが、合格者を43→36名として倍率は12.3→14.2倍と前年以上の厳しい入試でした。1月22日の2回入試からが一般入試になりますが、応募者は1,010→1,105名と9%増で、都内生の増加が目立ったようです。前年は入学者が200名と定員160名を大きく超過したため、今年は合格者を340→300名と絞り込んで倍率が2.8→3.5倍に上昇。3回の応募者は331→336名と微増ですが、前期の合格者を絞りすぎたため後期合格者を17→52名と増やし、倍率が18.1→5.9倍と大きく緩和しています(前年の合格者17名は定員を下回る例外的なものです)。
専修大松戸(松戸市)は前年応募者がやや減りましたが、今年は1回が1,065→1,119名と5%増、2回は831→906名で9%増、3回は571→626名で10%増と3回とも増えていて総数では2,467→2,651名で7%増です。地域別では県内、県外を問わず増えていますが、男女別では男子6%増、女子9%増と女子の増加が目立ちます。前年は入学者が超過したため、1回と2回は合格者を絞っています。そのため倍率も1回が1.9→2.1倍、2回は3.1→4.2倍と上がって難易度も上昇しているようです。3回は前年が極端に高く今年は8.5→4.1倍と例年並みになっています。

芝浦工業大柏 芝浦工業大柏(柏市)は併設の芝浦工業大への推薦入学率が1割を切り、東大合格者を2年連続で出すなど進学校としての人気が上がって3回すべての入試で応募者が増えています。前年は男子の増加が目立ちましたが、今年は女子の増加が目立ち、合計で男子が2%減、女子は54%増です。
1回の応募者は961→993名と3%増、2回も797→820名で3%増です。1・2回とも合格者をやや増やしたので倍率は1回が2.7→2.4倍、2回は4.4→3.7倍と低下しています。
3回は2012年入試まで1回・2回入試を受験した受験生のためのリベンジ入試で学力試験がありませんでしたが、2013年入試からは1・2回の受験の有無にかかわらず誰でも受験できるようになり普通の学力試験になりました。前年も70→118名と応募者が増えましたが、今年の応募者は1回・2回と同時出願ができるようになり118→688名と550名の大幅増です。最後の回で欠席が多くなるため受験者は111→159名と40名増ですが、1・2回の手続き状況が良いため合格者を42→15名と絞って倍率は2.6→10.6倍と急上昇し厳しい入試となりました。
東海大浦安(浦安市)は他の東海大系と同じく付属色の強い学校です。中高大10年一貫教育を謳っていて6年後の進路が東海大学に限定されるためか、ここ数年応募者の減少が続いています。すでにお伝えしてある推薦入試の応募者15%減に続き、一般入試でもAが582→490名と16%減、Bは224→199名と11%減、倍率はAが1.1→1.1倍と変わりませんが、Bは1.3→1.1倍と下がっています。
成田高校附(成田市)は仏教主義(真言宗)教育の学校ですが、実際には教育内容に宗教色はあまりないようです。前年入試で応募者が2回の合計で15%減となりましたが、今年も応募者の減少が続いています。前期は278→236名で15%減、後期は111→79名で29%減、2回の合計では389→315名で19%減です。前期倍率は合格者を絞っていないので2.0→1.6倍と低下、後期は合格者を34→15名と絞ったため2.9→4.9倍に上昇しています。
麗澤(柏市)は前年入試で男女とも応募者を減らしましたが、今年は3回の合計で男子が542→540名と2名減ですが、女子は590→721名と131名増、男女計では1、132→1、261名と129名増えて、11%増です。また受験者数では男子が305→342名、女子は337→469名と男女とも増えていて男女計では642→811名と169名、26%増です。倍率は1回が1.7→2.0倍、2回は1.9→3.0倍と上昇、3回は3.6→3.3倍とわずかに下がりました。
日出学園(市川市)は12月の推薦入試の応募者が男子2名減、女子8名増、男女計では46→52名と6名増でしたが、1月の一般入試では1期・2期の合計で男子が117→83名と34名減、女子は119→120名と1名増、男女計では236→203名と33名減です。ただしこの学校は一般入試にも第一志望と併願があり、第一志望は男女合わせてⅠ期が19→21名、Ⅱ期は12→18名と計31→39名、併願者はⅠ期が134→20名、Ⅱ期は71→44名、合計で205→164名と41名の減ですから、第一志望が増え、併願者は減っているというのが実態です。入試のボーダーは第一志望と併願でかなり差があり、Ⅰ期が165点/183点、Ⅱ期は151点/174点です(左が第一志望、右は併願の合格最低点)。
2.茨城の私立中入試
茨城には今春開校の韓国系民族学校の青丘学院つくば(石岡市)をふくめて11校の私立中と2校の私立中等教育学校があり、女子校が1校、共学校が12校です(男子校はありません)。
常磐線沿線の取手市、つくば市、土浦市などを中心とする県南地区と、水戸市を中心とする県北地区で入試状況が大きく異なっています。県南地区は東京・千葉に近いため県外からの受験生が多く比較的入試規模が大きい学校がかなりあります。これに対し県北地区は地元中心の比較的小規模入試の学校が多くなっています。県北地区の学校は現時点で入試データが未公表の学校が多いので、今回は県南地区の注目校をいくつか見ていきます。
県内唯一の女子校の聖徳大附取手聖徳女子(取手市)は入学レベルはさほど高くありませんが、丁寧な指導で面倒見がよく入学してから伸びる学校として評価が上がっているようです。この3年間で大学合格実績も大きく伸びているためか、推薦入試の応募者は32→25名と減りましたが、一般入試の応募者は3回とも増え、3回の合計で205→240名と17%増です。受験生の地域では約7割が県内生と女子校のせいか地元率が高いようです。併願校のレベルが上がっていて、主な併願校は県内では江戸川学園取手、県立並木、茗溪学園、常総学院、千葉では姉妹校の聖徳大附女子のほか、麗澤、芝浦工大柏などです。なお音楽コースについては割愛しますが、中2進級時に普通コースに転コース、あるいは高校進学時に普通科特進コースに転科する生徒もいるそうです。
県内トップの江戸川学園取手(取手市)は千葉や東京からの上位受験生が多い学校です。東大合格者が8→11→13名と伸びて、3回の入試とも応募者が増えており、人気上昇を裏付けています。応募者は1回が946→1,002名と6%増、2回は809→892名と10%増、3回は740→800名8%増です。合格者も増やしているので1回の倍率は前年並みですが、2回は1.8→1.9倍、3回は1.7→1.8倍とわずかにアップしています。
茗溪学園(つくば市)は筑波研究学園都市にある準寮制学校です。前年は自己推薦入試を廃止しましたが、今年は一般入試を2回から3回に増設しています。文科省から指定を受けているスーパーサイエンスハイスクール(SSH)としての取り組みを積極的にアピールした結果か、男子の応募者が1回203→248名で22%増、2回は67→106名で58%増です。またこの1、2年の減少が大きかった女子も1回が10%増、2回は42%増と大きく回復しています。新設の3回は2月6日と遅い日程ながら、応募者51名、受験者48名、合格者16名という結果です。

土浦日大 土浦日大(土浦市)は新設のSAT入試が大ヒットです。SAT入試とは公立一貫校で行われている適性検査型入試で、前年は一般入試2回で4科入試と選択できる総合学力試験として行われていたものを、今年は適性検査型に衣替えして独立させた入試です。入試日を茨城県公立一貫校の検査日(1/11)より前の一般入試1回と同日(1/6)の午後に実施し、応募者が26→126名と激増、ほとんどは県立並木との併願者です(ごく少数、県立古河・県立日立第一との併願者もいたとのこと)。また他の回の入試でも応募者が増えていて、一般1回が154→178名、2回は104→153名です。倍率は1回が1.4→1.7倍、2回は2.2→2.0倍でした。
なお応募者を地域別に見ると、以前は県外生(ほとんど千葉県生)が7割前後でしたが、震災後は県外生が5割弱まで減って、県内生が5割を超えているとのことです。
常総学院(土浦市)は中堅レベルの進学校ながら、2012年に東大1名、筑波大19名の合格者を出し、2013年には2年連続の東大、さらに京大、東工大、東京外語大の合格者も出し、早慶上智大も20→19→41名と伸ばして注目されました。12月の推薦・専願入試は応募者が84→81名と前年並みでしたが、ここ数年700名前後だった一般入試1回の応募者が713→550名と大幅減です。これは前年入試まで行われていた千葉の柏会場の出張入試を都合により取りやめて学校会場だけになり県外受験生が大きく減ったためです。合格者を582→448名と絞っているので倍率は1.2倍で変わっていません。
なお前回の繰り返しになりますが埼玉や千葉の中学入試状況を見ていく際に以下に述べる事情に注意する必要があります。首都圏の中学入試は実施時期から、埼玉・千葉の1月入試と東京・神奈川の2月入試に大きく分かれ、埼玉・千葉の1月入試には東京・神奈川の受験生が大量に「試し受験」しています。そのために「試し受験」が集中する東京寄りのいくつかの学校は同規模・同レベルの東京・神奈川の学校に比べて応募者、受験者が非常に多くなる場合があります。しかし東京・神奈川の受験生の多くは合格しても入学しないためそれを見越して合格者も大量に出します。したがって見かけの応募倍率が実態と大きく乖離していることが多いので注意が必要です。
また応募者の増減が東京・神奈川の受験生の「試し受験者」の増減によるのか、県内を中心とした「本気受験者」の増減によるのかによっても入試の内容が大きく変わってきますから、その見極めも重要なポイントになります。
1.千葉の私立中入試
千葉の私立中は24校あり、女子校が3校、共学校が21校です(男子校はありません)。2012年入試では前年の東日本大震災の影響で県内の多くの学校が応募者数を減らしましたが、2013年入試では主要校の多くが応募者数を回復しました。2014年入試はまだデータがそろっていないため統計数字で示すことはできませんが、個々の学校での増減はもちろんあるものの、千葉全体としては微増もしくは前年並みを維持しているようです。東京・神奈川・埼玉では全体として応募者減は間違いないところですから1都3県では最も堅調な入試だったといえましょう。なお12月に行われた推薦入試(専願入試、第一志望入試)については第53話を見てください。
(1)女子校
国府台女子(市川市)は仏教主義(浄土真宗)教育の女子校です。ここ数年好調な大学実績や新校舎完成で人気が上がり、第一志望の推薦の応募が増えてきたため推薦の定員を40→50名に増員したところ、応募者が240→222名と減ってしまいました。推薦とはいえ4倍近い倍率のため敬遠されたのでしょうか。
一般入試の1回も応募者が924→806名と118名の減ですが、減った118名のうち90名は居住地からみて明らかに「試し受験者」なので、「本気受験者」の減は28名ということになります。受験者は860→740名で、合格者が450→435名ですが、「本気受験者」の割合が高くなったため手続き率が上がり公募定員160名に対し推薦合格の68名を含め210名以上が手続きしていて、このままいけば教室が足りなくなりそうな状況です。 そのため2回は合格者を絞り込んで定員の10名を下回る8名とし倍率が9.5倍という厳しい入試になっています。

聖徳大附女子 聖徳大附女子 (松戸市)は昨年からS選抜クラス・選抜クラス・進学クラスの3クラス制になり、今年は入試の各回の定員と選考方法を大きく変えています。前年は1回午前・午後と特待生選考入試のみでS選抜の合格を出していましたが、今年は特待生選考入試を除くすべての入試回で成績によってS選抜クラス・選抜クラス・進学クラスの合格を出すように変わりました(したがってスライド合格はなくなりました)。12月の第一志望入試は45→30名と定員減ですが応募者は前年と同数の65名でした。1回午前は定員を15→80名と増員とスライド合格なしでS選抜のみの判定からS選抜、選抜、進学の3クラスの判定を行うようになり、応募者が65→199名と3倍増。定員を45→10名と減員の1回午後は141→92名と減っていますが、2回と特待入試も好調で、応募総数では678→764名と13%増、受験総数では468→511名と9%増です。この応募者・受験者の増加は入試選考方法の変更で受験しやすくなったのにくわえ、前年度に新設されたS選抜クラスが定着してきたこともあるでしょう。入試状況は上位層が増えたものの、合格者総数を300→433名と44%も増やしているのでやや緩和しているようです。合格者の3クラスの内訳はS選抜83→99名、選抜143→206名、進学74→128名です。
和洋国府台女子(市川市)はここ数年応募者・入学者の減少が続いているため、昨年は定員を280→210名と減員しました。今年は一般入試を2回から3回に増設しています。しかし応募者総数は1,044→1,156名と増えたものの、欠席者が増えたため受験者総数は744→612名と132名減です。合格者総数を668→549名と減らしたため、3回平均の倍率は昨年の2回の平均倍率と1.1倍で変わっていません。
(2)共学校
まず千葉御三家といわれるトップ3校から見ていきましょう。
渋谷教育学園幕張(千葉市美浜区)は東大合格者を34→49→61名と大きく伸ばして注目を集めましたが、難化が予想されて敬遠されたのか、応募者は1次が1,850→1,822名、2次は546→557で総数では2,416→2,379名と微減です。しかし学校の評価が高まり手続き率の上昇を予想してか合格者を絞っていて、倍率は1次が2.3→2.5倍、2次は10.2→11.4倍と上がっています。
またハーバード大学など北米を中心とした海外の大学への指導でも実績を上げているためか、帰国入試の応募者は73→110名と大幅に増加し、倍率も1.9→3.2倍に大きく上昇しています。

市川 市川(市川市)は東大・京大・一橋大・東工大の最難関国立4大学の合格実績を14→19→36名と伸ばし勢いがあります。
1回の応募者は帰国生を除いて2,495→2,697名と8%増、受験者も2,427→2,615名で8%増、合格者を前年同数の1,225名にとどめたため倍率は2.0→2.1倍とわずかに上昇しています。受験生が増えているのは主に県内の市川市や千葉市を中心とした地元エリアと都内東部です。大学合格実績の向上によって県内生が東京の学校ではなく本校を選ぶようになってきているようで手続き状況も良くなっています。2回の応募者は前年の応募者増で敬遠されたのか県内生が減って(都内生は変わらず)478→422名と12%減、受験者は443→392名と12%減ですが、1回の手続き状況がよいため合格者を77→65名に絞り込んで倍率は5.8→6.0倍に上昇しています。
応募者は2回合計で2,973→3,114名と5%増、受験者も2,870→3,007で5%増でした。なお1回と同日に行われた帰国生入試の応募者は渋谷教育学園幕張や海城などに上位層が回ったのかⅠ型・Ⅱ型の合計で80→61名と減っています。
東邦大付東邦(習志野市)もこのところ大学合格実績が好調で、東大、京大、一橋大、東工大の最難関国立大4大学の合格者が20→26→31名と伸びています。またよく知られているように併設の東邦大医学部も含めた医歯薬系進学にも強い学校です。
このところ応募者数は安定していますが、女子にやや増加傾向が見られます。今年の前期の応募者は2,477→2,475名と前年とほとんど同数ですが、内訳では男子が26名減、女子は24名増でした。男子は県外の受験生が減り、女子は県内の受験生が増えているとのことです。合格者を1,149→1,101名と絞って倍率は2.1→2.2倍とわずかに上がっています。
後期の応募者は466→497名と31名増で、前期とは逆に男子が36名増、女子が5名減です。合格者が34→26名と絞られて倍率は12.8→17.4倍と急上昇し厳しい入試となっています。
上記の3校に続くのが昭和学院秀英(千葉市美浜区)です。1回は12月1日の第一志望入試で応募者は微減ですが、合格者を43→36名として倍率は12.3→14.2倍と前年以上の厳しい入試でした。1月22日の2回入試からが一般入試になりますが、応募者は1,010→1,105名と9%増で、都内生の増加が目立ったようです。前年は入学者が200名と定員160名を大きく超過したため、今年は合格者を340→300名と絞り込んで倍率が2.8→3.5倍に上昇。3回の応募者は331→336名と微増ですが、前期の合格者を絞りすぎたため後期合格者を17→52名と増やし、倍率が18.1→5.9倍と大きく緩和しています(前年の合格者17名は定員を下回る例外的なものです)。
専修大松戸(松戸市)は前年応募者がやや減りましたが、今年は1回が1,065→1,119名と5%増、2回は831→906名で9%増、3回は571→626名で10%増と3回とも増えていて総数では2,467→2,651名で7%増です。地域別では県内、県外を問わず増えていますが、男女別では男子6%増、女子9%増と女子の増加が目立ちます。前年は入学者が超過したため、1回と2回は合格者を絞っています。そのため倍率も1回が1.9→2.1倍、2回は3.1→4.2倍と上がって難易度も上昇しているようです。3回は前年が極端に高く今年は8.5→4.1倍と例年並みになっています。

芝浦工業大柏 芝浦工業大柏(柏市)は併設の芝浦工業大への推薦入学率が1割を切り、東大合格者を2年連続で出すなど進学校としての人気が上がって3回すべての入試で応募者が増えています。前年は男子の増加が目立ちましたが、今年は女子の増加が目立ち、合計で男子が2%減、女子は54%増です。
1回の応募者は961→993名と3%増、2回も797→820名で3%増です。1・2回とも合格者をやや増やしたので倍率は1回が2.7→2.4倍、2回は4.4→3.7倍と低下しています。
3回は2012年入試まで1回・2回入試を受験した受験生のためのリベンジ入試で学力試験がありませんでしたが、2013年入試からは1・2回の受験の有無にかかわらず誰でも受験できるようになり普通の学力試験になりました。前年も70→118名と応募者が増えましたが、今年の応募者は1回・2回と同時出願ができるようになり118→688名と550名の大幅増です。最後の回で欠席が多くなるため受験者は111→159名と40名増ですが、1・2回の手続き状況が良いため合格者を42→15名と絞って倍率は2.6→10.6倍と急上昇し厳しい入試となりました。
東海大浦安(浦安市)は他の東海大系と同じく付属色の強い学校です。中高大10年一貫教育を謳っていて6年後の進路が東海大学に限定されるためか、ここ数年応募者の減少が続いています。すでにお伝えしてある推薦入試の応募者15%減に続き、一般入試でもAが582→490名と16%減、Bは224→199名と11%減、倍率はAが1.1→1.1倍と変わりませんが、Bは1.3→1.1倍と下がっています。
成田高校附(成田市)は仏教主義(真言宗)教育の学校ですが、実際には教育内容に宗教色はあまりないようです。前年入試で応募者が2回の合計で15%減となりましたが、今年も応募者の減少が続いています。前期は278→236名で15%減、後期は111→79名で29%減、2回の合計では389→315名で19%減です。前期倍率は合格者を絞っていないので2.0→1.6倍と低下、後期は合格者を34→15名と絞ったため2.9→4.9倍に上昇しています。
麗澤(柏市)は前年入試で男女とも応募者を減らしましたが、今年は3回の合計で男子が542→540名と2名減ですが、女子は590→721名と131名増、男女計では1、132→1、261名と129名増えて、11%増です。また受験者数では男子が305→342名、女子は337→469名と男女とも増えていて男女計では642→811名と169名、26%増です。倍率は1回が1.7→2.0倍、2回は1.9→3.0倍と上昇、3回は3.6→3.3倍とわずかに下がりました。
日出学園(市川市)は12月の推薦入試の応募者が男子2名減、女子8名増、男女計では46→52名と6名増でしたが、1月の一般入試では1期・2期の合計で男子が117→83名と34名減、女子は119→120名と1名増、男女計では236→203名と33名減です。ただしこの学校は一般入試にも第一志望と併願があり、第一志望は男女合わせてⅠ期が19→21名、Ⅱ期は12→18名と計31→39名、併願者はⅠ期が134→20名、Ⅱ期は71→44名、合計で205→164名と41名の減ですから、第一志望が増え、併願者は減っているというのが実態です。入試のボーダーは第一志望と併願でかなり差があり、Ⅰ期が165点/183点、Ⅱ期は151点/174点です(左が第一志望、右は併願の合格最低点)。
2.茨城の私立中入試
茨城には今春開校の韓国系民族学校の青丘学院つくば(石岡市)をふくめて11校の私立中と2校の私立中等教育学校があり、女子校が1校、共学校が12校です(男子校はありません)。
常磐線沿線の取手市、つくば市、土浦市などを中心とする県南地区と、水戸市を中心とする県北地区で入試状況が大きく異なっています。県南地区は東京・千葉に近いため県外からの受験生が多く比較的入試規模が大きい学校がかなりあります。これに対し県北地区は地元中心の比較的小規模入試の学校が多くなっています。県北地区の学校は現時点で入試データが未公表の学校が多いので、今回は県南地区の注目校をいくつか見ていきます。
県内唯一の女子校の聖徳大附取手聖徳女子(取手市)は入学レベルはさほど高くありませんが、丁寧な指導で面倒見がよく入学してから伸びる学校として評価が上がっているようです。この3年間で大学合格実績も大きく伸びているためか、推薦入試の応募者は32→25名と減りましたが、一般入試の応募者は3回とも増え、3回の合計で205→240名と17%増です。受験生の地域では約7割が県内生と女子校のせいか地元率が高いようです。併願校のレベルが上がっていて、主な併願校は県内では江戸川学園取手、県立並木、茗溪学園、常総学院、千葉では姉妹校の聖徳大附女子のほか、麗澤、芝浦工大柏などです。なお音楽コースについては割愛しますが、中2進級時に普通コースに転コース、あるいは高校進学時に普通科特進コースに転科する生徒もいるそうです。
県内トップの江戸川学園取手(取手市)は千葉や東京からの上位受験生が多い学校です。東大合格者が8→11→13名と伸びて、3回の入試とも応募者が増えており、人気上昇を裏付けています。応募者は1回が946→1,002名と6%増、2回は809→892名と10%増、3回は740→800名8%増です。合格者も増やしているので1回の倍率は前年並みですが、2回は1.8→1.9倍、3回は1.7→1.8倍とわずかにアップしています。
茗溪学園(つくば市)は筑波研究学園都市にある準寮制学校です。前年は自己推薦入試を廃止しましたが、今年は一般入試を2回から3回に増設しています。文科省から指定を受けているスーパーサイエンスハイスクール(SSH)としての取り組みを積極的にアピールした結果か、男子の応募者が1回203→248名で22%増、2回は67→106名で58%増です。またこの1、2年の減少が大きかった女子も1回が10%増、2回は42%増と大きく回復しています。新設の3回は2月6日と遅い日程ながら、応募者51名、受験者48名、合格者16名という結果です。

土浦日大 土浦日大(土浦市)は新設のSAT入試が大ヒットです。SAT入試とは公立一貫校で行われている適性検査型入試で、前年は一般入試2回で4科入試と選択できる総合学力試験として行われていたものを、今年は適性検査型に衣替えして独立させた入試です。入試日を茨城県公立一貫校の検査日(1/11)より前の一般入試1回と同日(1/6)の午後に実施し、応募者が26→126名と激増、ほとんどは県立並木との併願者です(ごく少数、県立古河・県立日立第一との併願者もいたとのこと)。また他の回の入試でも応募者が増えていて、一般1回が154→178名、2回は104→153名です。倍率は1回が1.4→1.7倍、2回は2.2→2.0倍でした。
なお応募者を地域別に見ると、以前は県外生(ほとんど千葉県生)が7割前後でしたが、震災後は県外生が5割弱まで減って、県内生が5割を超えているとのことです。
常総学院(土浦市)は中堅レベルの進学校ながら、2012年に東大1名、筑波大19名の合格者を出し、2013年には2年連続の東大、さらに京大、東工大、東京外語大の合格者も出し、早慶上智大も20→19→41名と伸ばして注目されました。12月の推薦・専願入試は応募者が84→81名と前年並みでしたが、ここ数年700名前後だった一般入試1回の応募者が713→550名と大幅減です。これは前年入試まで行われていた千葉の柏会場の出張入試を都合により取りやめて学校会場だけになり県外受験生が大きく減ったためです。合格者を582→448名と絞っているので倍率は1.2倍で変わっていません。
[次回予告] 「2014年中学入試速報!―― 2月 東京の私立中入試② ―― 」
第53話では12月から始まった千葉・茨城の推薦入試と海外帰国生入試、第54話では年が明けて始まった埼玉、そしてこの第55話では千葉・茨城の一般入試の入試状況を見てきました。そして2月1日から首都圏中学入試の本丸ともいうべき東京・神奈川の私立中入試がスタートしています。第56話からは数回に分けて東京の注目される私立中の入試状況を速報していきます。